皆様、こんにちは!!
ラッコ店長です。
ロングツーリングで恐ろしいものについて、取り上げます。
第五回目はワイヤー切断です。
過去の記事は以下をご参照ください。





ワイヤーとは
まず、本稿では、ブレーキワイヤー、シフトワイヤーのことをー「ワイヤー」と称します。
(ブレーキケーブル、シフトケーブルと呼ばれることもあります)
もちろん、最新、かつ高価な車体であれば、油圧ディスクブレーキ、有線電動式、無線電動式の変速機が採用されていますから、各種パーツを操作するためのワイヤーはありません。
(その分、電源ケーブルや油圧ホースは必要になりますが、一般的にはワイヤーとは表現しません。)
しかし、多くのスポーツバイク、ロードバイクでは、今でも車体の操作にワイヤーを使っています。
ロングツーリング中に、そのワイヤーが切れてしまったらどうするか、というのが本稿の主題です。
原則 日々のメンテナンスを重視する
そもそも、出先でトラブルが起きる前に、十分準備、メンテナンスをしてからロングツーリングに臨むべきです。
年に一回はブレーキワイヤー、シフトワイヤーを全交換しておけば、まず、ロングツーリング中であったとしてもワイヤーの切断は起きないでしょう。
しかし、年間数千km以上ツーリングするような方ですと、年に一回の交換でもワイヤーは切断すると思います。
(ラッコ店長は半年に1回はリアシフトワイヤーが切れます)
ワイヤーの交換、各パーツの調整は一応はプロレベルの難しさがあるため、馴染みの自転車屋さんに依頼するのが無難だと思われます。
それでも切れてしまった場合
それでもメンテナンスの狭間であったり、悪天候、激しいダウンヒルが続いたロングツーリングなどでは、ワイヤーが切れてしまうことがあります。
以下、状況に応じて解説します。
ブレーキワイヤーが切れた場合
昨今のロードバイクは急速に油圧ディスクブレーキに移行しています。
しかし、クロスバイク、クラシックなロードバイクでは、まだまだブレーキワイヤーを使った車体が多くあります。
ツーリング中で、ブレーキワイヤーが切れやすいのは、一般的にはフロントでしょう。
なぜなら、フロントブレーキは(細かな原理は省略致しますが)制動力が高く、多用されるため、ワイヤーが傷みやすいのです。
また多くの方は右利きで右手の方がチカラを入れやすいため、さらにフロントブレーキのワイヤーの方が負担がかかりやすくなります。
これに対して、リアブレーキは制動力が低いため、あまり使用されることはなく、左手ということも相まって、切断の頻度が低いのです。
そして、フロントブレーキが切れたまま、重装備のツーリング車に乗り続けることは危険です。
制動力が極端に落ちて、ダウンヒル中に減速が間に合わないことがあります。
予備ワイヤーを携行し、交換する
万全なのは、予備のワイヤーを携行しておくことです。
実は、SHIMANOであれば、何種類かグレードがあります。
スチール
ステンレス
シルテック
ポリマーコーティングです。
ツーリングで使いやすいのは、
スチール
ステンレス
シルテック
までで、ポリマーコーティングばメンテナンスの頻度が高く、荒っぽい使い方をしないレース用車体向けでしょう。
ツーリングであれば、スチール、ステンレス、シルテックのいずれでも構いません。
スチールが錆びやすいというのは事実ですが、安価で頻繁に交換しても惜しくないのが特徴です。
錆びにくいのと、価格のバランスの良い、ステンレスがツーリング用としては万能でしょうか。
シルテックは表面にテフロンコーティングが施されているもので、入門グレードを超えた、やや高価なロードバイクに採用されています。
予算に余裕があるのであれば、このシルテックワイヤーでも良いでしょう。
ところで、フロント、リアワイヤーは長さが異なります。
しかし、リアワイヤー用の長いワイヤー(2050mmなど)を1本、用意しておけば、万一出先でワイヤーが切れたとしてもなんとかなります。
リアワイヤーをフロントに移植する
しかし、予備ワイヤーが無い場合には、リアブレーキのワイヤーを取り外し、それをフロントに移植します。
フロントブレーキさえ利けばなんとかなるでしょう。
50km、100kmも移動すれば、自転車店にたどり着けるはずです。
そこで、ワイヤーを調達します。
なお、ブレーキワイヤーには、大きく2種類あります。
ワイヤーの末端部分、タイコと呼ばれる部分の形が2種類あるのです。
クロスバイク、マウンテンバイクなどに採用されている形と、STIレバーなどのロードバイクに採用されている形です。
ワイヤーを調達するときは、それを間違えないようにしてください。
そして、フロント用(1000mmなど)、リア用(2050mmなど)で長さが異なりますが、1本だけ携行するのであれば、リア用でも使えるものにしておけばフロント、リアどちらでも使えて便利でしょう。
リアでも使える長いケーブルをフロントに使った場合、ものすごく余ってしまいます。
しかし、さすがに、出先にワイヤーカッターを持ち歩くのは非現実的でしょうから、フロントホイールに絡まないよう、末端をくるくると巻いて、バラけないようにしっかりまとめておきます。
ワイヤー交換なんて出来ない!!という場合は、片方のブレーキだけでなんとか最寄りの自転車店まで進み、ワイヤー交換を依頼してください。
もっとも、ブレーキワイヤーの切断は、よほど酷使されている車体か、メンテナンスが不十分すぎる車体でなければ起きないでしょう。
シフトワイヤー切断
実は、もっとも多いのが、シフトワイヤーが切れてしまうことです。
特に、リアディレイラーのワイヤー切断の頻度が一番高いでしょう。
ツーリングのスタイルにも寄ると思われますが、走行中、頻繁にブレーキをかける、ということはあまりありません。
しかし、ギア比を調整するために、変速することは、ものすごく多くあります。
そして、ブレーキワイヤーよりも、シフトワイヤーの方が細く、昨今のSTIレバーであれば、レバーをコンパクトにするためにワイヤーの経路をかなり強引、直角に近い角度に曲げていることがあります。
さらに、空気抵抗を減らすために、ワイヤーを車体の内部に装備したり、あれこれと無理のあるワイヤーの這わせ方をしているのです。
ただでさえ細いワイヤーを、このように不自然な経路でつなげているため、各所に負担がかかりまして、現代のシフトワイヤーはとても切れやすくなっています。
前述しましたが、ラッコ店長のツーリングバイクは半年に1回はリアシフトワイヤーが切断されます。
リアシフトワイヤーが切れた場合、悲劇です。
ディレイラーはそのままの状態では、バネのチカラで常に小さくなろうとします。
ワイヤーが切れたディレイラーは小さくなり、ギア比がどんどん上がっていく(ペダリングが重くなる)のです。
重装備のツーリング車で、最大のギア比にした場合、特に坂道では、全体重をかけてもペダリングできない、先に進まないということもあります。
つまり、一歩も先に進めなくなるのです。
フロントブレーキ、リアブレーキの関係と同様、シフトワイヤーもフロントが短く、リアが長くなります。
ブレーキであれば、前述しましたように、ほとんど切断するのはフロント側で、ゆえに長さに余裕のあるリアをフロントに移植する、というワザも使えました。
しかし、シフトワイヤーの場合、切断するのはほとんどリア側、ワイヤーが長い方なのです。
そのため、リアシフトワイヤーが切れた場合に、短いフロントからワイヤーを移植して、急場をしのぐ、ということはできません。
また、これは余談になりますが、仮にフロントシフトワイヤーが切れても、フロントチェーンリングがインナー固定されるだけ(ギア比が下がる、軽いギアになる)です。
最大速度は遅くなるかもしれませんが、軽いギアで固定される分には、ひとまず進むことができるため、それほどの問題とはなりません。
リアシフトワイヤーが切れた場合、このような悲劇が生ずるのですが、回避するのは3つの方法しかありません。
予備パーツもなく、自力での交換も難しい場合
最寄りの自転車店まで押し歩きます。
その場合、重いツーリング車であれば、時速3kmくらいしかでないと思われます。
山中でリアディレイラーワイヤーが切断した場合は、絶句しますが、上りは押し歩き、下りは車体に乗って下るしか無いでしょう。
ロードサービスに加入している場合
万一の保険として、ロードサービスに加入していると安心です。
いくつかサービスが存在しますが、ラッコ店長が存じ上げているものとして、以下のものがあります。
年会費¥3,400で、年4回まで救出してくれます。
正直申して、年4回以上、リアシフトワイヤーが切断することは無いでしょう。
また、距離も50km以上運んでくれますから、ひとまず次の集落まで運んで頂いて、自転車店の営業時間内であればお頼みし、営業時間外であれば、その集落周辺で夜を明かすのが良いでしょう。
予備ワイヤーがある場合
予備ワイヤーがある場合は、交換をします。
ラッコ店長は、つねにシフトワイヤーの予備を携行しています。
過去、何度もツーリング中にシフトワイヤーが切れたことがあったからです。
シフトワイヤーにもシマノであればグレードがあります。
スチール
ステンレス
オプティスリック
ポリマーコーティングです。
ツーリングで使いやすいのは、ブレーキワイヤーの選択と似ていて、
スチール
ステンレス
オプティスリック
までだと思います。
スチールワイヤーはあまりにも安価であるため、Amazonでは販売されていないかもしれません。
(自転車屋さんに行っても最低のラインナップはステンレスからで、スチールワイヤーは販売していない、というプロショップが多いでしょう。)
また、最上位のポリマーコーティングワイヤーはすぐに毛羽立つため、贅沢な車体でなければ逆に使いにくいでしょう。
荒っぽい使い方をするロングツーリング車には向かないと考えます。
しかし。。。
難易度は高めです。
リアディレイラーワイヤーが切れるのは、ほとんどの場合、STI内部の曲がりくねった箇所です。
STIレバーのカバーをめくって、タイコ(ワイヤーのレバー側、末端部分)が埋め込まれている場所を露出させます。


手持ちの工具をなんとか使って、タイコを外します。
シフトアップ(重たいギア)すると、タイコが露出しやすくなります。
しかし、ほとんど場合、STIレバー内部でワイヤーが崩壊、絡んでいるため、そうすんなりとは動かないでしょう。

ワイヤーを取り除きます。
満足な工具もない中で、このタイコを外すのは、極めて難易度が高いといえましょう。
ささくれだったワイヤーで手を切らないように、十分注意してください。

ところて、小型のペンチが1つあるだけで、ワイヤーの引き出し、パーツの簡易支持など、人間の指では不可能な補修作業が一気に可能になります。
積載能力に余裕のあるツーリングであれば、持参しておくと安全です。
精度、耐久度の高い、ホーザンのものをおすすめします。
重量は45gで、無視できる軽さ、ではないでしょうか。
ホーザン(HOZAN) ミニチュアラジオペンチ P-35
新しいワイヤーを這わせます。
このとき、長期保存していたワイヤーは先端部分がほつれているかもしれません。
瞬間接着剤なりで、先端部を補強すると、ワイヤーを通しやすくなると思います。



瞬間接着剤で補強し、だいぶんマシになりました。

慎重にワイヤーを通していきます。
先端部分がほつれかかっているため、とくに用心します。


フレームがシフトワイヤー内装式の場合、難易度はさらに上がります。
その場合は。。。なんとかするしかありません。
しかし、あらかじめ、ワイヤーの経路、ルーティングを理解していないと、出先での修理は難しいでしょう。
リアディレイラーにワイヤーを固定します。


ワイヤーの初期のびをとります。
あまったワイヤーがホイール、ディレイラーにからまないよう、十分に注意して巻いておきます。
完成です。
応急処置が終わったら 工具をお借りする!?
あくまでも応急処置ですから、最寄りの街の自転車店さんなどで、シフトワイヤーを張り直してもらうか、ワイヤーカッターで切断をお願いするのが良いでしょう。
なお、自転車店さんによっては、ご厚意で工具を貸してくださるお店もありますが、当店では丁重にお断りしています。
理由が気になる方は以下の記事をご参照ください。

おすすめ工具、ツールボックス類、おすすめしない工具
パーツを収納するツールボックスには、ゼファールのツールボトルを愛用しています。
各社ツールボトルは販売しておられますが、これが最大容量、さらに拡張の余地もある、というのがお気に入りポイントです。
また、耐久度もあり、かれこれ10年近く使っています。

ラッコ店長が業務で多用しているのは、以下のKTCアーレンキです。
しかし、ツーリング中であっても、これがあれば万全ですが、ツールボックスに入らないことがあります。
そのような場合は、短めのものを持参すると良いでしょう。
なお、十徳ナイフのようなツールは、極めて使いにくく、結局実用性は低い、というのが個人的な見解です。
便利そうで、全てのツールの品質、使用能力が低く、まさに器用貧乏の典型だからです。
(ないよりはマシ、というのは、そのとおりです。)
車体にもよりますが、ロングツーリングであれば、4mm、5mmのアーレンキがあれば大抵の修理は可能です。
さらに安全度を収納上げるため、3mm、6mmのアーレンキ、プラス、マイナスドライバー、ラジオペンチがあれば、万全でしょう。
また、別記事で特集致しますが、チェーン切りがあると、実はよろしいのです。
その詳細は別記事と致します。
皆様の車体のワイヤーがツーリング中に切れないことをお祈りしております。
本日はこのあたりで宜しいと存じます。
それでは、皆様、次回お会いするときまで、ごきげんようです!!
以上、ラッコ店長こと、奈須野でした。



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