皆様、こんにちは!!
ラッコ店長です。
自転車店(に限りませんが)、お店はお客に言われたことだけをすれば良いのか、というものがあります。
よくあるのは、パンク修理してください、とだけ依頼されたときです。
「パンク修理」という口頭の依頼に、どこまでの修理内容が含まれるのか、という問題です。
結論
結論から先に申し上げれば、
接客業の基本は顧客に満足してもらうこと。
したがって、その時々、お客さん、車体に応じて臨機応変に対処するしかない。
しかし、商売(お話を大きくすればあらゆる勝負事)で負けない、大損害を受けないコツは危険なことをしないこと、負けるようなことをしないこと、リスクを回避すること。
つまり、口頭の依頼内容が不明であれば、その場で明らかにし、その場で明らかにすることができなかったのであれば、改めて顧客の意思を確認するまでは仕事に着手しない。
となります。
以下、詳述します。
パンクとは
そもそも、パンクとは、英語のpuncture、突き刺さる、貫通するという意味に由来する日本語です。
しかし、自転車業界では、パンクと表現した場合、主に、チューブに穴があいて開いていることを意味します。
タイヤに穴が開いている場合も、英語の原義であればパンクとなるのでしょうが、この場合は明らかに交換が必要、故障箇所がはっきりしているため、あえてパンクとは表現しません。
そういうわけで、パンク修理してください、という口頭の依頼の場合、原則はチューブの穴を直して下さい、チューブから空気が漏れないようにしてください、という意味になります。
そして、チューブの穴を直すのであれば、パッチ修理といわれる、ゴム製の当て布を貼って、それで穴を塞ぐことができます。
しかし、このパッチ修理、万能ではなく、応急処置に近い、対処療法なのです。
場合によっては数週間後にパッチが剥がれて空気漏れが再発することもありますし、別の箇所から空気漏れを起こすこともあります。
いわゆるママチャリ、シティサイクルにお乗りの方は、車体の使い方、保管状況などに無頓着な方が多く、車体、タイヤ、チューブの状態が非常に悪い、ということもあるのです。
そのような車体は、パッチ修理をしたところで、近い将来、別の箇所が故障する可能性が高いのです。
そのとき、自転車屋さんは、どのように対応するのか、そこが評判の良いお店とそうではないお店の分岐点となります。
言われたことだけをする
まず、お客さんに言われた通り、パンク修理、つまりパッチ修理だけをする、というパターンがあります。
言われたことだけをする、ある意味、無難です。
料金も、パッチ修理だけであれば、消耗品はゴム糊とパッチのみですから、パーツ代原価は¥100くらいでしょうか。
あとは作業をしたスタッフさんの作業料、工賃となります。
お店にもよるでしょうけれども、パッチ修理であれば¥1,000-2,000というお店が多いでしょう。
修理としては最安になるため、車体を返却したときに、お客さんからも喜ばれます。
しかし!!
ここに落とし穴があるのです。
依頼主の車体が電動自転車の場合、パッチ修理はしないほうが良いです。
電動自転車は車体が重く、パワーもあるため、チューブやタイヤの状態が良くない、内部がズタズタになっていることが多々あります。
パッチ修理で1箇所穴を塞いだところで、パンクをした電動自転車のチューブは地雷原のように潜在的な穴だらけ、いつ他の箇所に穴が相手もおかしくないほど傷んでいることがほとんどだからです。
ゆえに、当店でも電動自転車でパンク修理をしてください、と言われた場合には、ほとんどチューブ交換をして対応しています。
お客さんに電動自転車の特殊性を説明して、おそらくはチューブ交換をしなければ直らないでしょう、電動自転車の分解作業は工数が多いため、費用は¥7,000はかかる、時間もかかる、といった予想をあらかじめ、明確に伝えておく必要があります。
これを怠って、言われた通りパッチ修理だけして返却すると、大抵は数日後、ひどいときには数時間後にお客さんがお戻りになり、またパンクした、どうしてくれる!!とお怒りになるのです。
そして、お店にはGoogle mapの星1コメントが1つ増えることでしょう。
現代において、Google mapの星1コメントは痛恨の一撃というくらい、極めて大きなダメージです。
お店側の事情
もちろん、スタッフさんがお客さんに詳細を確認しない、という気持ちは良く分かります。
車体の特殊性、パッチ修理の難しさ、修理代金が高額になることをご説明し、それに対してご了承をいただく、ということになれば、それだけで5分はかかるでしょう。
店内が猛烈に立て込んでいる場合、事前にお客さんに対して詳細に説明する時間が無い、手間を割くことができないことがあるのです。
ささっと引き受けて、ささっと修理して返したい、そういう心境です。
また、修理金額が高額になる、と伝えた場合、お客さんが嫌がるのではないか、帰ってしまうのではないか、修理依頼をとれないのではないか、パッチ修理だけでも売上が増えるのであれば、構わない、という事情もあるでしょう。
商売、勝負事の基本
しかし!!
商売、勝負事の基本は、冒頭で述べましたように、負けることをしないこと、です。
パッチ修理でコツコツと稼いでいたとしても、お客さんからの怒りのクレームという、一度の大敗で、今までの苦労が全て水泡に帰すことがあるのです。
面倒でもその場で確認する、店内が混雑、立て込んでいてその場では確認できなかったのであれば、お客さんに電話、電子メールなどで確認をする、お客さんと連絡が取れないのであれば、修理に着手しない、という用心深さが極めて重要です。
言われたこと以上のことをする
次に、お客さんの依頼がパンク修理で、事前にタイヤ、チューブの交換可能性、修理代金が高額に及ぶことを伝えずに、お店側だけの判断でタイヤ、チューブなどを交換するのもトラブルの元です。
プロ目線、玄人視点からすれば、お店の行為は至当、親切なことであります。
しかし!!
お客さんの真意は「パンク修理」をしてほしいだけで、パーツの交換までは求めていない、ということがあります。
そのような場合、タイヤ、チューブの状態が悪かったので、交換しておきました、¥9,000になります。
などとお伝えすると、凄まじい反発、クレームを受けることがあります。
たとえその¥9,000という金額が自転車業界の相場として相当なものであり、修理すべきという判断がプロ目線からは妥当であったとしても、お客さんの内心的な意思、(表面からははっきりしない)依頼には反していた、ということで、トラブルになるのです。
そして、せっかく良い仕事をしても、最終的にはお客さんに満足してもらえない、場合によってはGoogle mapの星1評価という、ふんだりけったりの結末が待っています。
ここでも商売の基本を忘れてはいけません。
負けることをしないこと、です。
パンク修理の依頼を受けるときは、必ずお客さんの意思を確認すること。
修理内容が高額になる可能性を伝え、了承を得ること。
了承が得られないのであれば、残念ながらお帰り頂くことです。
現代の自転車、とくにママチャリはとんでもなくお安く流通しています。
これはかつての自転車よりも品質を下げている、ということもありますが、それ以上に、車体の組み上げを東南アジア諸国で行い、組み上げコストを大幅に抑えているからできることなのです。
しかし、必ずしも賃金の安くない日本国内で修理をした場合、それだけで作業料が数千円かかる、というのはザラなのです。
ゆえに、お安い自転車の場合、修理をしないで、大変恐縮ながら、壊れた場合は捨てるほうが合理的、ということがあります。
これらのエピソードも、自転車屋さんからすれば時間がかかって面倒でしょうが、事前にご説明すると、あとあとのトラブルを防ぐことができるでしょう。
これらの説明をせずに、お店がプロ目線としては妥当な修理をして代金を請求した場合、他のお店ではもっと安いと言われた、他のお店で見積もりをしてもらったらもっと安かったという、てひどい口コミをもらうことになるのです。
もちろん、お店さんの価格設定が本当に物凄く高かった、ということもあるでしょう。
しかし、同じ自転車屋さんで、似たような作業内容にもかかわらず、2-3倍も価格が違う、ということは市場原理の働いている日本ではおよそありえない。。。と推察します。
このような現象が起きているのは、お客さんが「パンク修理」を最低限、最安値の作業で直るものと決めつけ、それを前提に他店へ問い合わせ、相談をしているから、と推察します。
問い合わせを受けたお店も、パンク修理はいくらですかと聞かれた場合、安い方から、いくらいくら、と説明するでしょう。
また、お店のスタッフさんが詳細に説明するのも面倒だと思った場合は、パッチ修理だけの値段をとりあえず伝えるに違いありません。
このようにして、お客さんは勝手に安い値段が相場と考え、自分が実際に支払った金額は高すぎる、むきーーー!! Google map星1にしてくれる!!となるのです。
長々と申し上げましたが、お客さんを満足させるのが出発点ですから、何を求めておられるのかはっきりさせ、それに沿うことが重要なのです。
お客さんの希望に沿えないお店は、職人肌、とっつきにくいお店、気難しい店主のお店といった評判がたつでしょう。
当店の使用機材、ツーリング中の携行品
当店で普段使用している修理機材は以下の通りです。
ゴム糊はハケ付きのものが使いやすいですね。
業務用でなければ、チューブに入ったものでも、なんでもよろしいかもしれません。
パッチは、同じくマルニという会社の丸型パッチを好みます。
幅広のパッチもありますが、そもそもパッチ修理というものが前述しましたように、小さな穴に対する対処療法に過ぎず、大きなパッチである必要が無いのです。
大きなパッチでなければ塞げないような穴は、もはやパッチ修理すべきではない、チューブ交換すべき段階にある、と判断するからです。
スポーツバイクのチューブには高い気圧を充電するため、パッチが剥がれやすく、ママチャリのパッチ修理に比べて、さらに応急処置、邪道に近い修理方法となります。
ゆえに、原則としては、スポーツバイクのパッチ修理はお受けしていません。
しかし、世の中例外もあるもので、どうしても費用を抑えたいとか、ツーリング中など、出先で代えのチューブが無い、という場合にはパッチ修理せざるを得ないことがあります。
そのような場合に使うのが、マルニ超薄型パッチです。
通常のパッチよりも薄く、スポーツバイクの薄型チューブに貼り付けても変形が少ない、タイヤを回転させたときのボコッボコッという違和感が出にくくなっています。
もちろん、違和感が出にくい、というだけで、マルニ超薄型パッチで修理後のチューブは、新品のチューブよりはいびつになります。
あるいはこのような表現をするのがためらわれますが、とにかくお金を節約したい、ということであれば、使うことも。。。あります。
今まで述べた修理キットは、全てゴム糊を使うものでした。
しかし、ゴム糊は揮発性、可燃性が高いため、飛行機などには積載できないのです。
飛行機輪行する場合には、ゴム糊すら使わない、イージーパッチを使います。
これは、本当に応急処置です。
半永久的な修理ではなく、ツーリングが終わるまでの一時しのぎとお考え下さい。
とはいえ、ラッコ店長も飛行機輪行で長期ツーリングをする場合には、持っていきます。
タイヤレバーはPanaracerのものが薄く、使いやすいでょう。
しかし、業務で使うとなると、実は定期的にタイヤレバーが折れます。
安価に入手できる樹脂製のタイヤレバーであれば、結局はなんとでもなります。
金属のレバーは耐久度が高いのが取り柄ですが、リムを傷つけやすい、チューブを傷つけやすいと、やや玄人よりのレバーです。
ラッコ店長が業務に使うレバーは樹脂製のものです。
本日はこのあたりで宜しいと存じます。
以上、ラッコ店長こと、奈須野でした。
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